研究概要
Research Outline
本研究領域は、細胞内タンパク質に人工的な翻訳後修飾(neo-PTMs)を導入することによって細胞内化学ネットワークを創出、
その変化を理解し、それを役立てる学理を構築することを目指しています。
neo-PTMsとは
タンパク質は細胞・生体機能の中心を担う分子です。ヒトゲノムにはわずか2万〜2万5千のタンパク質の一次配列しかコードされていませんが、その転写産物であるRNAが様々な化学修飾を受け、さらにその翻訳産物であるタンパク質が様々な翻訳後修飾(PTMs)を受けることで、100万以上のプロテオームを形成します。つまり、DNA/RNA/タンパク質などの生体分子の化学修飾とそれが造る化学ネットワークによって、生体は多様な機能を獲得します。
しかし、化学が構築できる分子の構造と機能は無限大であり、生体分子が受ける化学修飾が内在的に見られる修飾に限定されなければならない理由は存在しません。生体が元来持っていない化学修飾をタンパク質に導入すれば、生体が元来有する以上の機能を付与できるかもしれない。本領域では、この「生体が元来持っていない、あるいはその存在が不明な化学修飾」をneo-PTMsと定義します。
しかし、化学が構築できる分子の構造と機能は無限大であり、生体分子が受ける化学修飾が内在的に見られる修飾に限定されなければならない理由は存在しません。生体が元来持っていない化学修飾をタンパク質に導入すれば、生体が元来有する以上の機能を付与できるかもしれない。本領域では、この「生体が元来持っていない、あるいはその存在が不明な化学修飾」をneo-PTMsと定義します。
研究目的・背景
本領域ではまず、化学の無限の多様性を人工翻訳後修飾(neo-PTMs)の形で細胞内のタンパク質に導入する手法を開発します。そして、neo-PTMsによって新たに造られる細胞内ケミカルネットワークを理解し、利用する学理を構築します。本研究領域は、これまで行われてきた細胞機能をプローブする化学と細胞生物学の融合とは異なり、細胞内に新たな化学的秩序を造り出す合成化学と、プロテオミクス、細胞生物学とが融合する新興領域です。本研究の達成により、酵素の機能調節を基盤とした従来の方法では達成不可能な新しい生体機能制御法が見出され、生物学・医薬学への貢献が期待されます。
プロジェクト概要
Project Outline
01
neo-PTMsの自在導入
生命を形作る化学反応ネットワークの代表が、DNAを細胞の核内に収納するタンパク質であるヒストンの翻訳後修飾です。ヒストンにおける、様々な位置の、様々な種類の翻訳後修飾が、複雑に連関しあって化学ネットワークを形成し、その結果として、染色体の構造機能や遺伝子の転写が制御されています。A01班(山次)では、独自のヒストンアシル化触媒系を基盤にして、neo-PTMsを生細胞内でヒストンに導入し、neo-PTMsが造る生体内化学反応ネットワークの深い理解を目指します。
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02
生体内化学ネットワークの
創出
創出
生命は、ゲノム (DNA)・トランスクリプトーム (RNA)・プロテオーム (タンパク質)・メタボローム (代謝物質) など複数の階層をまたいだ分子間相互作用ネットワークにより制御されます。A02班 (五月女) では、内因性補酵素誘導体や酵素阻害剤によって誘導される人工的なタンパク質翻訳後修飾反応をneo-PTMsとして捉え、これに連動して誘起される分子間シナジー変化を理解し、制御することを目指します。
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03
新機能の発見
これまでの研究では、生物が自然に備えているPTMsの理解を深めることに重点が置かれ、自然界で存在しない(あるいは存在が不明な)neo-PTMs がどのような生命機能を持つのかについては不明な点が多くあります。そこで本研究では、化学的(A01班:山次)あるいは、酵素的(A02班:五月女)に導入可能なneo-PTMsを対象として、これらのneo-PTMsが細胞さらには動物個体内で果たす新たな生命機能を生化学、細胞生物学あるいは分子生物学的視点から包括的に理解することを目指します。
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